なかなか思い出深い、商品を企画し、実際に発売まで取り組んだプロダクト。
ヘルメットに取り付ける、耳を塞がないワイヤレススピーカーの提案。

盟友・金田さんのサポートを得ながら、
企画書を書き、外部とのコラボレーションも画策し、
商品をデザインしたり、実働のモックアップを作ったり、
ODM先を探したり、ODM先で諸々の打合せをしたり、
パッケージデザインのディレクションをしたり・・
よく頑張ったなあ、若き日の自分。

それまでも、毎週のように売り上げをチェックしながら、
競合との比較・分析を繰り返し、企画担当者と商品の企画を考えたり、
企画書をまとめてプレゼンに備えるような仕事を随分としていましたが、
「全く新しい商品を作る」という点では、かなり印象深い仕事となりました。

当時、開発部門内で「新しいワイヤレススピーカーを考えよ」という
お達しが役員よりありました。
外部のデザイナーにも依頼したり、
異なるカテゴリの商品を扱うメンバーにも企画を頼んだりしながら、
普段からワイヤレススピーカーに取り組んでいる我々も様々なアイデアを出しました。
そのうちのひとつに「自転車に乗りながら使えるスピーカー」を提案しました。
まあちょっと本筋とは違うよね、という反応は受けながらも、
企画の面白さは感じていたので、
自転車メーカーに勤める大学の先輩にも相談したりしながら、
実際に使える有線接続のモックアップを作って、
自転車に乗って実用性を確認したりしました。
(単純に風切り音の軽減になるのも発見でした。)
大手自転車メーカーとのダブルブランドでの発売も検討し、
想定の販売数なんかも積み上げて、なんかイケそうだったので、
社長プレゼンを通過して、そのまま商品化してしまいました。

パッケージデザインも大学の先輩にお願いしたり、
チーム名市大でデザインを完結した商品でもあります。

ODMだったこともあり、音響設計がうまくいかなかったり(もっといい音にしたかった)、
ヘルメットへの固定方法で工夫しきれない部分もあったり、
正直、改善の余地は多々認めていますが、
それでもそれなりに、良い体験ができるプロダクトだったと思います。

悲しきかな、
自転車と歩行者との事故が話題になった時期でもあり、
期待していたほどの実売にはつながりませんでした。
(この製品では周囲の音もきちんと聞こえながら、音楽を楽しめるのですが…
 またほとんどの事故の原因は前方不注意で音楽ではないのですが…)

アマゾンのレビューを見ると、
多くのお客さんに商品の魅力がきちんと伝わっているようで、
それだけが救いです。
スケッチ。
当初は結構、迷走してました。
ヘルメットの一部みたいなイメージで、イカつい造形を探ったりしてましたが、
やりすぎてんなーと思って、なるべく要素を減らそうみたいなテーマで描いてみて、
ちょっとしっくりきて、その方向でまとめてみた、みたいな感じだったかと。
色付きの細いラインの内側が大きなボタンになっていて、
グローブをしながらも音量の調整なんかができるようになっています。

波形のグラフはウィンドノイズについて検証したものです。
有線のプロトタイプをつくったときに、
ウィンドノイズの低減は確認できたので、実測してみたものです。
実際にはそれを大きくは謳いませんでしたが、
効果はなかなか大きかったと思います。

総じて、なかなか面白いプロジェクトだったなーと思います。
今になって、外の音を聞きながら音楽も聴けるような製品も多々ありますが、
ある意味、そのハシリのような製品だったと思います。